- ✓厚生労働省の職業情報サイト(令和7年賃金構造基本統計調査ベース)では、柔道整復師の平均年収は約454万円とされている
- ✓年収は地域・勤務先の規模・経験年数で差が出る一方、就業者は増え続け施術所数は頭打ちで、平均が上がりにくい構造がある
- ✓年収を大きく上げる現実的なルートは独立開業や役職昇進・機能訓練指導員などで、開業して健康保険を扱うには資格取得後の実務経験と研修が必要
「柔道整復師は食えない」「給料が安い」——進路で柔道整復師を検討する人も、現役で転職や独立を考える人も、こうした噂に不安を抱きがちです。求人サイトをのぞくと平均年収が385万円とも430万円とも書かれ、どれが本当の数字なのか、地域や経験でどれだけ変わるのかが見えにくいのが実情です。
この記事では、柔道整復師の年収を厚生労働省の職業情報サイト(job tag)や賃金構造基本統計調査、衛生行政報告例、施術管理者の受領委任要件といった公的・一次情報のみを根拠に整理します。求人媒体の独自集計ではなく公的統計をもとに、平均年収の実額、格差が生まれる構造、勤務と独立の違い、そして年収を上げる現実的な選択肢を、推測を交えず事実ベースで解説します。
読み終えるころには、平均額だけでなく「なぜ上がりにくいのか」「どうすれば上げられるのか」を自分の言葉で説明できるようになります。特定の求人や業者への誘導はせず、判断に必要な事実だけをお渡しします。
柔道整復師の平均年収はいくらか
柔道整復師の平均年収について、最も信頼できる出発点は厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」です。job tag の柔道整復師の職業詳細によれば、全国の平均年収は約454万円(令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成)とされています。これは求人サイトが独自に集計した数字ではなく、国の基幹統計をもとにした値です。
この年収は、月々「きまって支給する現金給与額」を12か月分にし、年間の賞与その他特別給与額を加えて算出されます。元になっている賃金構造基本統計調査(令和7年速報)は、主要産業の労働者の賃金実態を職種別に明らかにする厚生労働省の調査で、毎年公表されています。雇用形態・就業形態・職種・性・年齢・勤続年数・経験年数といった属性ごとに賃金を集計しており、職業別の賃金を語るうえで国内で最も基本となる統計です。
求人サイトに載る「平均年収385万円」「430万円」といった数字と、公的統計の約454万円がずれて見えるのは、母集団と算出方法が違うためです。求人媒体の値はその媒体に掲載された求人の提示額をならしたもので、提示額は実際の支給実績(賞与込みの年収)より控えめに表示されることが多く、地域や雇用形態の偏りでも上下します。年収の「相場観」を持つなら、まず国の統計に基づく約454万円を基準点に置くのが確実です。
求人サイトの「平均年収」と異なって見える理由
求人媒体が掲載する平均年収は、その媒体に載った求人の提示額をならした数字で、実際の支給実績とは異なります。掲載求人の地域や雇用形態の偏りで上下するため、媒体ごとにばらつきます。本記事では、こうした媒体集計ではなく国の統計に基づく数値を基準にしています。
年収を見るときは、月給・初任給・賞与の関係も押さえておくと誤解が減ります。求人票に並ぶ「月給」は手当を含む額面で、そこから社会保険料や税が引かれた手取りとは異なります。年収は、この月給の12か月分におおむね数か月分の賞与を加えたものです。初任給は当然ながら平均より低い位置から始まり、経験を積んで平均、さらにその上へと近づいていくのが通常の流れです。求人票の月給だけを見て年収を単純に12倍すると、賞与の有無で実態とずれることがある点には注意してください。
平均はあくまで全体をならした一つの目安です。柔道整復師の年収は、後述するように地域・勤務先・経験で幅が出るため、「平均454万円」を中心に上下に広がるイメージで捉えるのが実態に近いといえます。平均を下回っているからといって悲観する必要はなく、自分が年齢・経験・働き方のどの段階にいるかを踏まえて読むことが大切です。
年収の格差を生む3つの要因
「柔道整復師の年収」と一括りにしても、実際には人によって大きく差があります。SERP上位の各記事も格差の存在に触れていますが、その背景は主に次の3要因に整理できます。job tag では都道府県別や年齢階級別の賃金も確認でき、格差が統計上も表れています。逆にいえば、平均年収だけを見て「自分も約454万円もらえる」と考えるのは早計で、この3要因のどこに自分が位置するかで、平均から上にも下にも動きます。
地域による差
賃金構造基本統計調査は、賃金を都道府県別にも集計しており、職種を問わず都市部と地方で水準に差が出ます。柔道整復師も例外ではなく、job tag の職業詳細では都道府県を選ぶと地域別の数値が表示されます。求人の多寡や物価、施術所の集積度が地域差につながります。一般に、人口が多く施術所も求人も多い都市部のほうが提示水準は高くなりやすい一方、生活費も高いため、額面の差がそのまま手元に残る差にはなりません。地方は額面が抑えめでも生活コストが低く、自分が開業を視野に入れるなら競合の少なさが有利に働く場合もあります。年収を地域だけで比べるのではなく、生活費やキャリアの方向性とセットで考えるのが現実的です。
勤務先の規模による差
接骨院・整骨院の多くは小規模事業所ですが、複数店舗を展開するグループや、病院・整形外科クリニック、介護施設など勤務先の業態・規模はさまざまです。一般に組織が大きいほど賞与や昇給・役職の仕組みが整いやすく、年収のレンジに影響します。小規模な個人院は院長との距離が近く裁量を得やすい反面、賞与や昇給が経営状況に直結しやすく、グループ院は制度が安定している分、昇給は規定に沿った範囲にとどまりがちです。どちらが良いかは一概にいえませんが、年収の「安定性」と「伸び方」のどちらを重視するかで向き不向きが変わります。
経験年数・年齢による差
賃金構造基本統計調査は年齢階級・経験年数別の所定内給与額や賞与も集計しており、経験を重ねるほど賃金が上がる傾向が読み取れます。若手のうちは平均を下回りやすく、院長や管理職など責任ある立場になるにつれて年収が上がっていくのが一般的なモデルです。新卒・未経験で就職した直後は初任給水準からのスタートになるため、平均年収だけを見て「思ったより低い」と感じる人がいるのは、この年齢による積み上がりを差し引けていないことが一因です。
逆にいえば、これら3つの要因は自分で動かせる部分でもあります。求人を探す地域、勤務先の業態・規模、そして長く続けて経験と役職を積むかどうかは、ある程度は選択の余地があります。平均という一点だけでなく、3軸で自分がどこに位置するかを意識すると、年収の見通しがぶれにくくなります。
平均だけで判断しない
「平均454万円」は全年齢・全地域・全業態をならした数字です。自分の年収を考えるときは、地域・勤務先規模・経験という3つの軸で平均からどう動くかをあわせて見ることが、現実的な見通しにつながります。
「柔道整復師は食えない」と言われる背景
「柔道整復師は食えない」という噂は、単なるイメージではなく、供給側の数字である程度説明できます。厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、就業柔道整復師は令和6年末時点で78,666人で、前回(令和4年)より1,034人(1.3%)増えています。
就業者数は長期的に増加が続いてきました。同調査の統計表をもとに推移を見ると、次のとおりです。
| 調査年(各年末) | 就業柔道整復師数 |
|---|---|
| 平成26年(2014年) | 63,873人 |
| 平成30年(2018年) | 73,017人 |
| 令和2年(2020年) | 75,786人 |
| 令和4年(2022年) | 77,632人 |
| 令和6年(2024年) | 78,666人 |
一方で、受け皿となる柔道整復の施術所数は令和6年末で50,924か所と、前回比プラス8か所(0.0%)でほぼ横ばいです。担い手は10年で約1.5万人増えたのに、施術所の数は伸び悩んでいます。
⚠ 供給増と受け皿頭打ちが平均を抑える
働き手が増えても施術所が増えなければ、1施術所あたり・1人あたりの収益は分散しやすくなります。これが「平均年収が上がりにくい」「食えないと感じる人がいる」という声の構造的な背景です。あわせて、療養費(健康保険)の取り扱いが年々厳格化していることも、保険収入に依存してきた施術所の経営を難しくしています。
就業者数の推移をもう一段ていねいに見ると、平成26年から令和6年までの10年で約1.5万人増えていますが、増加のペースは近年ゆるやかになっています。それでも母数は積み上がり続けており、同じパイを分け合う担い手は確実に増えてきました。施術所数が横ばいであることと合わせると、新規参入で一気に高収入を得るのは以前より難しくなっていると考えるのが妥当です。
ただし、これは「全員が食えない」という意味ではありません。供給が増え平均が伸びにくいなかでも、後述する独立開業や役職昇進、付加価値スキルによって平均を大きく上回る人がいるのも事実です。むしろ供給過多の市場だからこそ、技術・専門性・経営力といった差別化要素を持つ人とそうでない人の差が開きやすい、と捉えるのが現実に近いといえます。
勤務と独立開業で年収はどう変わるか
年収を考えるうえで最も大きな分岐点が、勤務を続けるか独立開業するかです。両者は年収の決まり方そのものが異なります。
勤務柔道整復師
- ・給与・賞与で収入が安定しやすい
- ・経験・役職で上がるが上限は見えやすい
- ・経営リスクや初期投資を負わない
- ・平均年収(約454万円)の中心層を形成
独立開業
- ・収益の上限がなく高年収もありうる
- ・売上から経費を引いた事業所得が収入
- ・集患・立地・経営の巧拙で大きく変動
- ・健康保険を扱うには別途要件がある
勤務の場合、年収は勤務先の給与体系に沿って決まり、平均年収のボリュームゾーンを形づくります。経験を積み院長や管理職へ進むことで上がっていきますが、雇われている以上の上限は見えやすいといえます。毎月の収入が読めるため生活設計が立てやすく、保険や経営のリスクを直接負わないのが利点です。一方で、給与体系の枠を超えて大きく年収を伸ばすのは難しく、頭打ち感を覚える人が独立を検討する流れにつながります。
独立開業の場合、年収は「売上から必要経費を引いた事業所得」になります。上限はありませんが、施術所数がほぼ横ばいという市場で集患できるかどうかに大きく左右され、家賃・人件費・機器などの初期投資や固定費の負担も負います。開業すれば自動的に年収が上がるわけではない点は押さえておく必要があります。売上が立ち上がるまでの運転資金や、後述する健康保険を扱うための要件も含めて、開業後しばらくは勤務時より手取りが下がる時期があり得ることも見込んでおくべきです。
つまり勤務と独立は「どちらが得か」という単純な比較ではなく、安定を取るか上限を外すかというリスクの取り方の違いです。自分がどれだけ経営や集患に踏み込めるか、どの時間軸で年収を考えるかによって、適した選び方は変わります。
柔道整復師が年収1000万円を目指せるか
「柔道整復師で年収1000万円」というキーワードはよく検索されますが、賃金構造基本統計調査ベースの平均が約454万円であることを踏まえれば、1000万円は平均の倍以上に当たる水準です。勤務のまま到達するのは容易ではなく、現実的なルートは限られます。就業柔道整復師が約7.9万人いるなかで、この水準に届く人は一部に限られると考えるのが自然で、平均との距離からも「全員が目指せる目標」ではないことが分かります。
- ☑独立開業し、複数店舗化など事業として収益を伸ばす
- ☑大手グループで院長・エリアマネージャーなど役職に就く
- ☑プロスポーツチームや選手との専属トレーナー契約を得る
いずれも「資格を取れば自動的に到達する」ものではなく、経営力・実績・人脈といった資格以外の要素が大きく関わります。独立開業なら売上の規模を事業として伸ばす必要があり、勤務でも複数店舗を統括する立場や、結果を出し続けられる専属契約など、責任と実績が前提になります。1000万円という数字を目標にするなら、平均との距離を正しく認識したうえで、どのルートにどれだけ時間と資金を投資できるかを冷静に見積もることが大切です。平均年収との差を「現状の延長で埋まる差」ではなく「働き方の選択を変えて初めて狙える差」として捉えると、計画が現実的になります。
保険診療と年収の関係
柔道整復師の年収を考えるうえで見落とされがちなのが、保険診療を扱える立場になるまでの要件です。柔道整復師は免許を取れば開業できますが、整骨院・接骨院で健康保険による施術(受領委任)を取り扱う「施術管理者」になるには、別の条件を満たす必要があります。
地方厚生局の案内によれば、2018年(平成30年)4月から、施術管理者になるには資格取得後の実務経験と研修の受講が要件に加わりました。実務経験の期間は経過措置を経て段階的に引き上げられ、近年に届け出る場合は原則として一定年数の実務経験が求められ、あわせて施術管理者研修を修了する必要があります。
開業=即フル保険収入ではない
免許取得直後の開業自体は可能ですが、受領委任で健康保険を扱う施術管理者として届け出るには、上記の実務経験と研修が前提になります。保険収入を当て込んだ収益計画を立てる場合、この立ち上がり期間を織り込んでおく必要があります。最新の要件は地方厚生局の案内で必ず確認してください。
療養費の取り扱いが厳格化していることもあわせて考えると、保険診療だけに依存せず、自費メニューなど収益源を組み合わせる視点が、開業後の年収を左右します。柔道整復師の療養費は、骨折・脱臼・打撲・捻挫といった負傷への施術が対象で、慢性的な肩こりや疲労回復などは保険の対象外です。保険で扱える範囲が限られているうえに、不正請求対策として届け出や指導の仕組みが整備されてきた経緯があり、保険収入の比重が高い経営モデルは年々ハードルが上がっています。
こうした制度の動きは、勤務柔整師にとっても無関係ではありません。勤務先の収益が保険診療にどれだけ依存しているか、自費施術や物販などの収益源をどれだけ持っているかは、その勤務先の給与・賞与の安定度に影響します。年収を勤務先選びの観点で考えるときも、保険と自費のバランスは見ておきたいポイントです。
年収を上げるために取れる選択肢
平均年収が上がりにくい構造があるとはいえ、個人として年収を上げる道は複数あります。独立開業以外にも、勤務のまま、あるいは資格を活かして取れる選択肢を整理します。いずれも即効性がある近道ではありませんが、数年単位で積み上げれば平均との差を確実に縮められる現実的な手立てです。
- 1
院内で役職・管理職を目指す
院長やエリアマネージャーなど責任あるポジションに就くことで、賞与や役職手当を含めた年収アップが見込めます。
- 2
機能訓練指導員として介護分野で働く
柔道整復師は介護施設の機能訓練指導員になれる資格で、高齢化で需要が高まる領域です。勤務先の選択肢を広げ、待遇改善につながることがあります。
- 3
ダブルライセンス・専門性を加える
鍼灸師など他の国家資格やスポーツ・トレーナー領域の専門性を重ねることで、扱える施術や活躍の場が広がり、収入の伸びしろをつくれます。
- 4
独立開業に踏み出す
上限のない事業所得を狙うルートです。ただし集患・経営力と、前述の施術管理者要件が前提になります。
とくに機能訓練指導員としての道は、高齢化で介護分野の需要が高まっていることを背景に、就業先の選択肢を広げる現実的な手段です。柔道整復師はこの職に就ける国家資格の一つであり、接骨院以外のフィールドを持つことは、収入の安定と伸びしろの両面で意味があります。療養費(健康保険)の取り扱いが厳しくなるなかで、自費メニューや予防・トレーニング領域など保険に依存しない収益源を組み合わせる動きも広がっています。
こうした選択肢を考えるうえで前提になるのが、技術の研さんと学び続ける姿勢です。資格取得はスタート地点であり、施術技術の精度や、患者・利用者との信頼関係を築くコミュニケーション力が、結局は指名や継続来院につながり、勤務先での評価や開業後の売上を左右します。年収を上げる近道を探すより、選ばれ続ける施術者になることが、回り道のようでいて最も確実な年収アップの土台になります。
どの選択肢も、共通するのは「資格を取った後にどんな付加価値を積むか」で年収が変わるという点です。柔道整復師の活躍の場は接骨院だけでなく、整形外科・介護施設・スポーツ現場へと広がっており、自分の強みをどの領域で伸ばすかが、平均を上回るかどうかの分かれ目になります。供給が増えた市場では、何でもできる人より「この領域なら任せられる」と選ばれる人が収入を伸ばしやすい、という視点を持っておくとよいでしょう。
まとめ
柔道整復師の平均年収は、厚生労働省の job tag(令和7年賃金構造基本統計調査ベース)で約454万円です。ただしこれは全体をならした数字で、実際には地域・勤務先の規模・経験年数によって幅があります。
「食えない」と言われる背景には、就業柔道整復師が令和6年末で78,666人まで増える一方、施術所数が約50,924か所で横ばいという供給構造があり、平均が上がりにくくなっています。それでも、独立開業や役職昇進、機能訓練指導員、ダブルライセンスといったルートで平均を大きく上回る人もいます。年収1000万円は平均の倍以上で、限られたルートに到達者が集中します。
なお、年収を考えるときは「資格を取るまでにかかる学費・時間」という投資の側面も意識したいところです。養成施設で3年以上学ぶ費用と期間を回収できるだけの年収を、どのキャリアで実現するかという視点を持つと、進路や転職の判断がより具体的になります。開業して健康保険を扱う施術管理者になるには資格取得後の実務経験と研修が必要で、「開業=即保険収入」とはならない点も収益計画では重要です。平均額だけで判断せず、どの領域で付加価値を積むかという視点で自分のキャリアを考えていきましょう。柔道整復師という資格や仕事をより深く知りたい方は、柔道整復師のキャリア情報トップもあわせてご覧ください。