• 鍼灸師(しんきゅうし)とは「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格を持つ東洋医学の専門家
  • 鍼と灸でツボ(経穴)を刺激し、自然治癒力を高めて不調の改善をめざす仕事。美容・スポーツ・介護など活躍領域は広い
  • なるには養成施設で3年以上学び国家試験に合格する。年収・資格・なり方の詳しい数値は各ページで深掘りできる

「鍼灸師になりたい」「鍼灸師ってどんな仕事だろう」と調べ始めると、はり師・きゅう師・東洋医学・国家資格といった言葉が次々に出てきて、結局これが一つの資格なのか、何を学べばよいのか、いくら稼げるのかが整理できないままになりがちです。鍼灸師は名前こそ一つですが、実際には 「はり師」と「きゅう師」という2つの国家資格 を取得した人が名乗る職業です。このページでは、鍼灸師という職業の全体像を、厚生労働省の法令・職業情報と国家試験団体の公表データという公的な一次情報だけをもとに整理します。年収・資格・なり方といった個別テーマは、各ページでさらに詳しく深掘りできます。

鍼灸師とはどんな職業か

結論鍼灸師(しんきゅうし)とは、鍼(はり)と灸(きゅう)を用いてツボを刺激し、自然治癒力を高めて不調の改善をめざす東洋医学の専門家です。国家資格に裏づけられた医療系の職業です。

鍼灸師は一般に「しんきゅうし」と読みます。鍼(はり)と灸(きゅう)という東洋医学の技術を使い、人体にあるツボ(経穴)を刺激することで、血行や自律神経のはたらきに働きかけ、体の不調をやわらげていく仕事です。西洋医学が薬や手術で病気そのものに介入するのに対し、鍼灸は体がもともと持つ自然治癒力を引き出すアプローチをとる点に特徴があります。

鍼灸師は気軽に名乗れる肩書きではなく、国家資格に裏づけられた職業です。施術は人体に鍼を刺し、灸で熱を加える行為を伴うため、無資格でできる民間の「整体師」「リラクゼーション」などとは法的な位置づけが異なります。厚生労働省は「はり師・きゅう師」を一つの職業として職業情報提供サイト(job tag)に掲載しており、仕事内容や就業状況、賃金といった情報を公的データとして確認できます。

まず押さえること

鍼灸師=「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格を持つ東洋医学の専門家。鍼と灸でツボを刺激し、自然治癒力を高めて不調の改善をめざす仕事です。

はり師ときゅう師は別々の国家資格

結論「鍼灸師」という単一資格は存在せず、はり師ときゅう師という2つの国家資格を取って初めて鍼灸師と呼ばれます。どちらも「あはき法」に基づく国家資格です。

鍼灸師という職業を理解するうえで最初の関門が、ここです。「鍼灸師」という名前の単一資格は存在しません。鍼を扱う「はり師」と、灸を扱う「きゅう師」という別々の国家資格があり、両方を取得した人が一般に鍼灸師と呼ばれています。

この2資格はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)、いわゆる「あはき法」で定められた国家資格です。試験は別個に判定されるため、制度上は片方だけ合格してもう片方は不合格、という結果もあり得ます。

もっとも、養成施設の鍼灸科では2資格の受験資格を同時に満たすカリキュラムが組まれており、在学中に2つの国家試験をまとめて受験するのが一般的です。そのため「2資格だから2倍の年数がかかる」わけではありません。

2資格を分けて理解する

はり師=鍼を用いる施術の資格、きゅう師=灸を用いる施術の資格。多くの人は一つの養成課程(鍼灸科)で両方の受験資格を同時に得て、まとめて取得します。

鍼灸師の主な仕事内容

結論主な仕事は鍼と灸でツボを刺激する施術と、問診・脈診などによる状態の見立てです。東洋医学だけでなく解剖学・生理学など西洋医学の基礎も土台になります。

鍼灸師の仕事の中心は、患者の体の状態を見立て、適切なツボに鍼や灸で刺激を与える施術です。具体的には次のような流れで進みます。

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    問診・状態の確認

    症状やこれまでの経過を聞き取り、脈や舌、皮膚の状態などから体の傾向を見立てます。

  2. 2

    施術方針を決める

    肩こり・腰痛などの運動器系だけでなく、消化器系や自律神経の不調まで、対象に応じて刺激するツボや手技を選びます。

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    鍼・灸による施術

    髪の毛ほどの細い鍼でツボを刺激し、灸で温熱刺激を加えて、血行や自然治癒力に働きかけます。

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    経過の確認とセルフケア助言

    施術後の変化を確認し、生活上の注意点を伝えて次の来院につなげます。

こうした施術を支えるのは、東洋医学と西洋医学の両方の知識です。国家試験の試験科目には、医療概論・解剖学・生理学・衛生学・関係法規といった西洋医学・制度系の科目と、東洋医学概論・経穴概論・東洋医学臨床論といった東洋医学系の科目の双方が含まれます。鍼灸師は「東洋医学の専門家」でありながら、体の構造や生理を西洋医学的にも理解したうえで施術する職業だと言えます。

施術の対象は、肩こりや腰痛といった運動器系の不調にとどまりません。鍼灸は、消化器系・循環器系の不調や、冷え・自律神経のバランスの乱れなど、体の幅広い不調に対して用いられてきました。一人ひとりの体質や症状を見立てたうえで、刺激するツボや手技を選び分けていく点に、東洋医学らしい個別性があります。だからこそ、解剖学・生理学などの基礎医学と東洋医学の理論を両輪で学ぶことが、養成段階から重視されています。

名称独占と業務

はり師・きゅう師は国家資格として法律で位置づけられており、有資格者でなければはり・きゅうの施術を業として行えません。施術の安全性を担保するための仕組みです。

美容鍼・スポーツなど鍼灸師の活躍領域

結論鍼灸師の働く場は鍼灸院だけでなく、病院・介護福祉・スポーツ現場・美容などへ広がっています。資格を生かして独立開業もできます。

鍼灸師というと「鍼灸院で施術する人」というイメージが強いですが、実際の活躍領域はかなり幅広く、近年さらに広がっています。代表的な働く場は次のとおりです。

  • 鍼灸院・治療院での施術(独立開業を含む)
  • 病院・クリニックでの東洋医学的なアプローチ
  • 介護・福祉分野での機能維持や痛みのケア
  • スポーツ現場でのコンディショニングやケア
  • 美容鍼(美容を目的とした鍼施術)の分野

なかでも美容鍼やスポーツ分野は、近年とくに注目される領域です。美容鍼は顔まわりのツボに鍼で刺激を与えるもので、リラクゼーションや美容意識の高まりを背景に需要が広がっています。スポーツ現場では、選手のコンディショニングやケガのケアに鍼灸の技術が活用されています。

高齢化が進むなかで、介護・福祉の現場で痛みのケアや機能の維持に鍼灸の技術が求められる場面も増えています。体力や腕力に頼りすぎない仕事であるため、年齢を重ねても続けやすく、ライフスタイルに合わせた働き方を選びやすいのも特徴です。はり師・きゅう師は医師などと同様に独立開業ができる国家資格であり、勤務と独立の両方にキャリアの道が開かれています。勤務と独立で年収や働き方がどう変わるかは鍼灸師の年収のページで詳しく扱います。

鍼灸師になるには

結論鍼灸師になるには、高校卒業後に養成施設(専門学校・大学)で3年以上学び、はり師・きゅう師の国家試験に合格する必要があります。独学・通信だけでは受験資格を得られません。

鍼灸師になるまでの道のりは、大きく「養成施設で学ぶ → 国家試験に合格する → 免許登録する」という3段階です。国家試験を受けるには、高校卒業などで大学入学資格を持ったうえで、認定された養成施設(専門学校または大学)で3年以上、必要な知識および技能を修得することが条件になります。臨床実習も課程に含まれます。

ここが進路設計で見落とされやすい点ですが、鍼灸師は人体に鍼を刺し灸で熱を加える施術を行うため、受験資格は実技を伴う養成施設での修学に限られます。独学や通信教育だけで国家試験の受験資格を得ることはできません。

難易度の目安となる合格率は、おおむね7割前後で推移しています。公益財団法人東洋療法研修試験財団が公表する第34回(令和7年度・2026年実施)の結果は、はり師が受験者3,920名・合格者2,634名で合格率67.2%、きゅう師が受験者3,858名・合格者2,720名で合格率70.5%でした。合格基準はいずれも総得点170点中102点以上です。

独学・通信だけでは受験できない

「独学で取れますか」「通信で取れますか」という質問は多いものですが、養成施設での3年以上の修学が受験資格の前提です。年齢の上限はなく社会人や主婦からでも目指せますが、この修学条件は全員に共通します。

養成施設の選び方や受験資格の細かな条件は鍼灸師の資格のページで、入学から免許登録までの具体的な流れは鍼灸師になるにはのページで、それぞれ詳しく解説しています。

鍼灸師の年収と働き方の概要

結論鍼灸師の年収は勤務か独立開業か、活躍する分野によって幅があります。公的な賃金の目安は厚生労働省の職業情報で確認できます。

鍼灸師の収入は、一律ではありません。鍼灸院や病院などに勤務する場合と、自分で開業する場合とで収入の構造が変わり、美容鍼やスポーツといった分野や経験年数によっても幅が出ます。働き方の自由度が高い職業であるぶん、収入の振れ幅も大きいのが実情です。

公的な賃金の目安としては、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)のはり師・きゅう師の職業情報で、賃金や就業状況のデータを確認できます。求人媒体や治療院の採用ページに出てくる数字は媒体ごとにばらつきがあるため、まずは公的な職業情報を基準に把握するのが安全です。

年収は深掘りページで

勤務と独立、分野ごとの年収の目安や、収入を上げるためのキャリアの考え方は、数値を公的データに絞って鍼灸師の年収のページでまとめています。

鍼灸師と他の治療家資格の違い

結論鍼灸師(はり師・きゅう師)は、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師とは別の国家資格です。いずれも独立開業ができる点は共通しますが、行える施術が異なります。

「治療家」とひとくくりにされがちですが、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師は、それぞれ別の国家資格であり、行える施術の範囲が異なります。違いを整理すると次のようになります。

鍼灸師(はり師・きゅう師)

  • 鍼と灸でツボを刺激する東洋医学の施術
  • あはき法に基づく2つの国家資格
  • 独立開業ができる

他の主な治療家資格

  • あん摩マッサージ指圧師=手技による施術(同じくあはき法の国家資格)
  • 柔道整復師=骨折・脱臼・打撲・捻挫などへの施術(別の国家資格)
  • いずれも独立開業ができる点は共通

あん摩マッサージ指圧師は、はり師・きゅう師と同じあはき法に基づく国家資格ですが、鍼や灸ではなく手技による施術を行う点が異なります。柔道整復師は別の法律に基づく国家資格で、骨折・脱臼・打撲・捻挫といったケガへの施術を専門とします。これらの資格を複数取得して施術の幅を広げる人もいますが、まずは「鍼灸師は鍼と灸を扱う東洋医学の専門家」という核を押さえておくと、他資格との違いが整理しやすくなります。

まとめ

鍼灸師とは、(1) はり師ときゅう師という2つの国家資格を持つ東洋医学の専門家で、(2) 鍼と灸でツボを刺激し自然治癒力を高めて不調の改善をめざし、(3) 鍼灸院だけでなく病院・介護・スポーツ・美容など幅広い領域で活躍できる職業です。なるには養成施設で3年以上学んで国家試験に合格する必要があり、年齢の上限はなく社会人からでも目指せます。年収・資格・なり方の具体的な数値や手順は、鍼灸師の年収鍼灸師の資格鍼灸師になるにはの各ページで、公的データをもとにさらに詳しく確認できます。